福岡高等裁判所 昭和58年(ネ)150号 判決
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【判旨】
すなわち、本件請負契約における工事代金は、同契約によつて六五〇〇万円と定められ、かつ、右工事に関連して立替支出した水道工事費等は一九万八三二〇円であつたところ、被控訴人は控訴人に対し右工事代金のうち合計五三四八万七五五一円を次のとおり
昭和五一年五月六日 八〇九万円
同年同月三一日 一五八五万五四七六円
同年六月三〇日 一七七六万三六三九円
同年九月二日 一一七七万八四三六円
支払つたこと、したがつて、右約定工事代金の残額は一一五一万二四四九円となるところ、更に、被控訴人が同年一一月九日控訴人に対し本件請負工事代金として六五一万二四四九円を支払つたことは、いずれも前示のとおりであるので、ここで、被控訴人が、同年一一月九日の右弁済当時、本件請負代金残債務額が一一五一万二四四九円であることにつき何ら争うこともなく、右の六五一万二四四九円を控訴人に弁済した旨の控訴人の主張について検討する。
<証拠>によれば、本件建物は後示のとおり完成された被控訴人に引き渡されたうえ、昭和五一年九月二七日落成(竣工)式まで終えたが、控訴人会社の当時の従業員訴外松本透において控訴人の被控訴人に対する本件請負工事代金の取立てに従事し、前示合計五三四八万七五五一円の弁済を受けたが、更に、控訴人は、右約定工事代金の残額一一五一万二四四九円全額及び前示水道工事費等の立替金一九万八三二〇円の支払を受ける目的で、同年一〇月二九日頃、同時に、いずれも同日付の控訴人代表者名義であつて、その一通には、契約金額六五〇〇万円、前回迄の請求額五三四八万七五五一円、今回請求額一一五一万二四四九円、未受領額一一五一万二四四九円との記載、他の一通には、契約金額一九万八三二〇円、今回請求権一九万八三二〇円との記載のある各請求書を送付し、同年一一月九日正金相互銀行戸畑支店において被控訴人の経理担当事務員訴外藤崎某から、別段何の留保もなく、右の六五一万二四四九円の支払を受けたこと、一方、被控訴人は、当時建築関係コンサルタント業を営んでいた訴外江藤新司と相談のうえ、本件建物に抗弁(二)記載のような工事の各瑕疵部分、各不施工部分が存するものとし、その修補又は施工の各問題解決まで右約定工事代金残額の内金五〇〇万円の支払を延引させることを決意し、同金額の控除した残額である右の六五一万二四四九円の支払をしたものであるが、右支払に際し控訴人に対しその趣旨の表明はしなかつたこと、そこで、控訴人は、被控訴人がその後もその余の約定工事代金残額の五〇〇万円と右水道工事費等の立替金一九万八三二〇円の支払をしようとしないので、訴外松本透に対しその取立てを命じたところ、同訴外人において二回架電し「残金を支払つて貰いたい。」と請求し、被控訴人において「(控訴会社の)社長との話合いがついていないので、今来ても払えない。」と返事するという同様の遣り取りが繰り返された後、同訴外人が同年一二月三〇日請求書を持参したうえ被控訴人方を訪れ、直接面会して支払請求をしたが、被控訴人において(支払自体はするような調子で)「その点については(前同)社長と年明けてから話をするので帰つてくれ。」などと言つて、結局のところ右各金額の支払はなされなかつたことが認められ<る。>
そして、右認定事実並びに前示争いのない事実を総合検討すれば、被控訴人は、同年一一月九日控訴人に対し右の六五一万二四四九円を支払うに際し、五〇〇万円の支払を留保したものの、その支払留保の趣旨については、殊更これを控訴人に対し表明しなかつたのであるから、外形的には右支払当時右約定工事代金の未払残額が一一五一万二四四九円であることを争わず、その一部として右の六五一万二四四九円の支払をしたものと認められるので、同金員の支払は、なお、右約定工事代金の未払残額、ひいてはこれと関連する前示水道工事費等の立替金についての承認となるべき一部弁済たることを失わないものといわなければならず、したがつて、同金員の支払によつて被控訴人主張の消滅時効は中断されたものというべきである。
(美山和義 足立昭二 江口寛志)